第6回「エルトゥールル号からの恩返し 日本復興の光大賞20」表彰式
2020年2月26日(水)、東京都新宿区の新東京ビルにて「第6回 エルトゥールル号からの恩返し 日本復興の光大賞20」表彰式・懇親会を開催いたしました。 今回は新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり、開催を躊躇する声も上がりましたが、2020年の節目である第6回をもって同賞を終了することとなり、規模を縮小して関係者のみで式典を行いました。
18:30、東日本大震災で犠牲になられた方々のご冥福を祈る黙祷から始まり、池上彰審査委員長による審査講評、審査委員から各受賞団体への賞状授与につづき、代表者の方々からご感想などをお話いただきました。
この度ご協力いただいた関係各所の皆様、ご参加いただいた皆様に心から感謝申し上げます。
【受賞団体】
○大 賞○ 賞状盾、賞金100万円目録、トロフィー授与
「有限会社 クリエイティブ・ロダン」代表取締役 鈴木 明夫 様
○特別賞○ 賞状盾、賞金30万円目録、トロフィー授与
「一般社団法人 日本カーシェアリング協会」代表理事 吉澤武彦様
「希望と笑顔のこすもす公園」代表 藤井了様
「福島大学国際交流センター」副センター長 マクマイケル・ウィリアム様
【評価された各受賞団体の活動内容】
●有限会社クリエイティブ・ロダン(福島県いわき市)
大震災発生後、当時、福島県理容組合の副理事長だった明夫さんの父英治さんが理美容学校などに呼びかけ、理容師、美容師たちと協力しながら自分の店や仲間の店などを使って被災者たちに無料でシャンプーを行ったのが始まりです。このときは、バス会社がボランティアでバスを運行し、利用者たちを避難所から店までピストン輸送してくれました。何日も風呂に入れなかったり、髪の毛を洗えなかった利用者がほとんどで、シャンプーし、ドライヤーで髪の毛を乾かしてあげると、「これでさっぱりしました」「今夜はぐっすり眠れます」など、皆さんとても喜んでいました。
しかし、英治さんは2017年夏、病気のため66歳で急逝。父親の遺志を長男の明夫さんが引き継ぎました。明夫さんは機動性を持たせようと、移動店舗用の特別装備の付いた2トントラックを購入しました。このトラックは高さ3メートル以上、幅6、7メートルほどもあります。車の荷台にはシャンプー台や鏡など理美容室の店舗を丸ごと乗せてあります。ボタン一つで、理美容室に早変わりします。「どこでもロダン」と名付けられた移動店舗車両で、富岡町や大熊町などにも出かけ、被災者や高齢者施設の入所者たちにも、有料で理美容サービスを行い、喜ばれています。
今年、いわき市は台風の大きな被害を受けました。明夫さんたちは断水した施設を訪問し、入所しているお年寄りや職員たち200人以上に無料でシャンプーを行いました。
●一般社団法人日本カーシェアリング協会(宮城県石巻市)
東日本大震災で石巻市では約6万台の車が被災しました。ガレキの撤去や支援物資の搬入、壊れた自宅の後片付けなどなど。被災地では復興、生活再建のために車は必要不可欠です。同協会の吉澤武彦・代表理事は、ここに着目しました。企業や個人からの寄付で集めた中古車を石巻市の仮設住宅に持ち込むことで、この活動をスタートさせました。
これまでに寄付で集めた中古車は約447台。現在、同協会は、239台を所有し、活力ある地域づくりのために車を様々な形で役立てています。その一つとして石巻市内の復興公営住宅がある10地域では貸し出された車を使って、支え合うためのカーシェアリングが運営されています。利用者は約400人で平均年齢は74歳。病院への送迎や買い物、あるいは日帰りの慰安旅行などに車を活用しています。運転手は地域のボランティアの人たち。無償でレンタカーを運転してくれます。ボランティアの中には津波で母親を亡くした運転手もいます。母親にできなかった親孝行だと思って、母親と同世代の地元のお年寄りたちのためにハンドルを握っています。利用者はボランティア運転手の都合を聞きながら、車の運行日程を自分たちで作成します。ガソリン代などは利用者が分担して負担します。また、車の整備は石巻専修大学・自動車工学コースの学生たちが授業の一環として年2回、タイヤ、オイル交換などの整備をボランティアで行っています。
2018年に豪雨災害の起きた岡山県では、地元の行政や自動車販売業界と連携し98台の中古車を現地に集め、600件以上も無料で貸し出しました。自分の車が被災した人たちに喜ばれ、自宅の後片付け、ガレキの撤去などに大いに役立ちました。2019年の台風被害地でも100台以上の車を現地に集め、同様の支援を行っています。
吉澤代表理事は、高齢化が進み災害が多発する中、寄付車を活用したこうしたノウハウを全国に広げていきたいと話しています。
●希望と笑顔のこすもす公園(岩手県釜石市)
代表の藤井了さん(73)は、元岩手県職員。藤井さんは近くの神社の宮司も務めています。藤井さんと妻サエ子さんは、釜石を襲った津波から生き延び、「生かされた者の一人として、なにか皆さんのお役に立ちたい」と考えていました。藤井さん夫妻が住む釜石市甲子地区は、大震災後、17個所1千戸の仮設住宅が建てられ、5個所あった公園や運動公園は仮設住宅用地として転用され、子供たちの遊び場がなくなってしまいました。
震災直後の子供たちの中には、津波を思い出しては夜泣きをしたり、突然、奇声を上げるなどの問題行動を起こすなどのケースが目立っていました。辛い体験をした子供たちに笑顔を取り戻そうと、藤井さんは広さ3000平方メートルの私有地に私設「こすもす公園」を2012年6月にオープンさせました。被災地支援のボランティアたちの協力で、流木のケヤキを利用した高さ6・4メートルの滑り台やブランコ、あずまや、築山などを整備しました。子供たちが転んでもケガをしないようにと、公園には木材のチップを敷きました。
隣接する工場の高さ8メートル、幅43メートルもの外壁にボランティアたちが明るく楽しい「希望の壁画」を描きました。また、公園の隣にはサエ子さんが経営する地産地消などを目指す創作農家レストランこすもすもあり、公園は年間数万人が利用しています。開園以来ケガ人は一人も出していないといいます。餅つき体験やピザ作り、ジャガイモ堀り、キャンドルナイトなど年間を通じて様々なイベントも開催され、子供たちの笑い声が絶えません。
●福島大学国際交流センター(福島県福島市)
これは、福島大学の多文化混住型短期留学プログラムのことです。大震災後の2012年6月に開始され、これまで14回、実施されました。トルコの中東工科大学やアメリカのサンフランシスコ州立大学をはじめ、ドイツ、中国など9カ国17大学から205人の留学生が福島を訪問しました。福島大学や県内の高校生など650人以上と交流を深めました。
当初、アメリカの大学から留学生たちを送り出そうとしたところ、「原発事故で危険なフクシマになぜ、学生たちを行かせるのか」という反対の声や大学へのいやがらせがあったといいます。福島に対する海外のこうした偏見や風評を吹き払うために、留学生たちは、被災者たちと交流したり、仮設住宅にホームステイしたり、ガレキ撤去を手伝ったり、あるいはモモの刈り入れを楽しんだりと、約2週間、福島県内でいろいろな体験をします。往復の渡航費と食費は、留学生たちの負担です。
この計画の中心は福島大学国際交流センター副センター長のマクマイケル・ウィリアムさんです。マクマイケルさんは父親がカナダ人、母親が日本人です。子供のころ徳島県に住んだことがあるそうです。マクマイケルさんは、原発事故と、そこからの復興は世界が共有する普遍的な課題の一つと考えています。その意味でも、福島や福島大学の果たすべき使命は大きいと彼は話します。留学生たちが友好大使(アンバサダー)として、世界中から、福島の実像や素晴らしさを発信してほしい。さらに、福島の風評被害の払しょくや原発事故の風化を防ぐためにも、このプログラムを続け、さらに発展させたいと、マクマイケルさんは希望しています。
【日程】
2019年12月10日(火) 審査会 13:00-14:00
2020年 2月 26日(水) 表彰式 18:30-、懇親会 19:30-
【賞の趣旨】
明治時代に日本を訪問したトルコ・オスマン帝国の軍艦エルトゥールル号はその帰途、和歌山県串本町沖で岩礁に激突、爆発するという大惨事に遭遇した。地元住民による必死の救助も虚しく587人が死亡、生存者はわずか69人だった。しかし、日本全国から義援金が寄せられ、生存者は日本の軍艦でトルコまで無事に送還された。トルコ国民は日本人の厚意に心から感謝し、この出来事は両国友好親善の礎となった。
2011年3月11日に発生した東日本大震災は、岩手、宮城、福島の3県を中心に甚大な被害をもたらし、戦後日本最大の自然災害となった。世界中が支援を送る中、トルコからも官民それぞれのレベルから救助や支援が送られた。当会も数日に渡る炊き出しや、被災地の子供達を元気づけるためにトルコ旅行をプレゼントするなど、様々な活動を行ってきた。
しかし、震災から7年たち、記憶の風化が懸念される。当会ではエルトゥールル号の恩返しと一日も早い友好国・日本の復興を応援するため、2015年に「日本復興の光大賞」を創設した。ジャーナリスト・池上彰氏の全面的な協力を得て、復興のため地道に尽力している民間団体の中から特に優れた団体を選び、その活動や想いを世に広め、さらなる日本・トルコの友好関係発展を願うものである。
【選考方法 】
(1)地元に密着して、草の根で頑張っている民間団体。人知れず、地道に活動を続けている「縁の下の力持ち」である団体に少しでも光を当てる。
(2)被災地、被災者のために10年、20年、50年と長期的な視点に立って地道に活動している団体とする。活動の成果が、必ず地元に還元されるように取り組んでいるところとする。
【審査委員】
審査委員長:ジャーナリスト 池上彰氏
女優 宮本信子氏
東京大学大学院 法学政治学研究科 教授 藤原帰一氏
立命館大学 衣笠総合研究機構 准教授 開沼博氏
特定非営利活動法人日本トルコ文化交流会 理事長 アルバイ・ヌーレッティン
【後援】
岩手県、宮城県、福島県、岩手日報社、河北新報社、福島民報社、福島民友新聞社、めんこいテレビ